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顔のマッサージで認知症予防ができる!?「優しくゆっくりマッサージする感じがよいかも」
2026-06-12
注目オススメ
リンパに流す脳クリアランス療法の夜明け βアミロイド排出機能を高めよう!!
下畑享良先生 2025年6月10日(FB)より改訂して掲げます。
顔のマッサージで認知症予防ができる!?
リンパに流す脳クリアランス療法の夜明け
グリンファティック・システム排出機能を高めよう!!
リンパに流す脳クリアランス療法の夜明け
グリンファティック・システム排出機能を高めよう!!
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女性は認知症予防など気にせずに顔のリンパマッサージをする方が多いので,その際に「強く圧迫することなく,優しくゆっくりマッサージする感じがよいかも」と思っていただくとよいのかなと思った次第です.
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驚くべき論文がNature誌に掲載されました.脳脊髄液(CSF)は,脳内の老廃物や異常タンパク質を除去し,中枢神経系の恒常性を保つうえで重要な役割を果たしています(グリンファティック・システム).そのCSFの排出経路の一つとして,近年,頭蓋底から頸部リンパ節へと至るリンパ管ネットワークが注目を集めています.今回,韓国KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)などのグループは,このCSF排出経路を促進する物理的刺激法を開発し,マウスとカニクイザルにおいて有効性を確認しました.
研究では,Prox1–GFPマウスと呼ばれる遺伝子改変マウスを用いて,CSFの排出経路を可視化しています.このマウスは,リンパ管内皮細胞の転写因子であるProx1の発現領域で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するように設計されており,リンパ管を生体内で蛍光観察することができます.著者らはこのモデルを用いて,CSFが眼窩周囲,鼻腔,硬口蓋のリンパ管を通り,頸部浅層リンパ管(superficial cervical lymphatics;scLVs)を経て,顎下リンパ節(submandibular lymph node;smLN)へ排出されることを明らかにしました(上図).この経路は,従来知られていた深頸リンパ管(deep cervical lymphatics;dcLVs)とは異なり,皮膚のすぐ下に位置しているため,外部からの操作が可能である点に特徴があります.また,マウスの約半分のCSFがこの浅頸リンパ経路を通じて排出されることも明らかにしています.
一方,加齢マウスの検討では,加齢により鼻腔や硬口蓋に存在するリンパ管ネットワークが萎縮し,CSF排出が約30%減少するそうです.またscLVs自体の構造や自発的な収縮機能は保たれていましたが(その平滑筋は交感神経による神経支配を受けるそうです),内皮の一酸化窒素合成酵素(eNOS)のシグナリングには加齢に伴う障害が見られ,この経路が機能低下する一因と考えられました.
ここからが著者らの真骨頂ですが,力を精密に制御できる機械刺激装置を開発し,皮膚越しにscLVsを軽く撫でるように刺激する方法を試みました.その結果,若齢マウスでは,5分間の低強度刺激により,scLVs内および顎下リンパ節へのCSF排出が2〜3倍に増加しました.印象的なのが図2で,低強度刺激を受けたマウスの頸部浅層リンパ管に,CSFが流れ込んでいることを示す赤い蛍光が明瞭に観察されています.しかし高強度刺激では蛍光がほとんど見られず,過剰な物理刺激(=圧迫)では逆効果になることも分かりました.また低強度刺激で,側脳室から注入したCSFトレーサーの濃度が大槽(cisterna magna)からの回収液で減少したことから,CSF全体の排出が促進されていたことも示唆されました.
この手法は,高齢マウスにおいても同様に有効であり,加齢により低下していたCSF排出量がほぼ若齢レベルにまで回復しました.わずか20分間の軽い皮膚刺激によって,scLVsとリンパ節へのCSF排出量がそれぞれ4.7倍,2.8倍にまで増加し,加齢による機能低下を補う可能性があることが分かりました.
以上の結果は,非侵襲的,かつ簡便な方法でCSFの排出を促進し,加齢や神経変性疾患による脳機能障害の予防・治療につながる可能性を強く示唆します.特に,睡眠やリンパ排出の障害が関与するとされるアルツハイマー病に対する応用が期待されます.
私のよく知っている麻酔科医が「リンパに流す」とつぶやきながら顔のマッサージをしている姿を長年見て来ましたが,「彼女は正しかったのか」と大変驚きました.ただマッサージの仕方は考える必要があり,マウスの「眼窩周囲,鼻腔,硬口蓋のリンパ管を通り,頸部浅層リンパ管へ」という経路を考えると,ヒトでは下図のような感じになるのではないかと思います(たぶん).強く圧迫することなく,優しくゆっくりマッサージする感じがよいと思います.
Jin H, et al. Increased CSF drainage by non-invasive manipulation of cervical lymphatics. Nature. 643:755–767;2025. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09052-5
柳澤>気持ちの良いフェイスマッサージ、リンパの流れ、脳脊髄液の排出、・・・、認知症の予防、と内容が大変なインパクトあるものなので、コメントも沸き返っていますね。コメントもシェアします。
驚くべき論文がNature誌に掲載されました.脳脊髄液(CSF)は,脳内の老廃物や異常タンパク質を除去し,中枢神経系の恒常性を保つうえで重要な役割を果たしています(グリンファティック・システム).そのCSFの排出経路の一つとして,近年,頭蓋底から頸部リンパ節へと至るリンパ管ネットワークが注目を集めています.今回,韓国KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)などのグループは,このCSF排出経路を促進する物理的刺激法を開発し,マウスとカニクイザルにおいて有効性を確認しました.
研究では,Prox1–GFPマウスと呼ばれる遺伝子改変マウスを用いて,CSFの排出経路を可視化しています.このマウスは,リンパ管内皮細胞の転写因子であるProx1の発現領域で緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するように設計されており,リンパ管を生体内で蛍光観察することができます.著者らはこのモデルを用いて,CSFが眼窩周囲,鼻腔,硬口蓋のリンパ管を通り,頸部浅層リンパ管(superficial cervical lymphatics;scLVs)を経て,顎下リンパ節(submandibular lymph node;smLN)へ排出されることを明らかにしました(上図).この経路は,従来知られていた深頸リンパ管(deep cervical lymphatics;dcLVs)とは異なり,皮膚のすぐ下に位置しているため,外部からの操作が可能である点に特徴があります.また,マウスの約半分のCSFがこの浅頸リンパ経路を通じて排出されることも明らかにしています.
一方,加齢マウスの検討では,加齢により鼻腔や硬口蓋に存在するリンパ管ネットワークが萎縮し,CSF排出が約30%減少するそうです.またscLVs自体の構造や自発的な収縮機能は保たれていましたが(その平滑筋は交感神経による神経支配を受けるそうです),内皮の一酸化窒素合成酵素(eNOS)のシグナリングには加齢に伴う障害が見られ,この経路が機能低下する一因と考えられました.
ここからが著者らの真骨頂ですが,力を精密に制御できる機械刺激装置を開発し,皮膚越しにscLVsを軽く撫でるように刺激する方法を試みました.その結果,若齢マウスでは,5分間の低強度刺激により,scLVs内および顎下リンパ節へのCSF排出が2〜3倍に増加しました.印象的なのが図2で,低強度刺激を受けたマウスの頸部浅層リンパ管に,CSFが流れ込んでいることを示す赤い蛍光が明瞭に観察されています.しかし高強度刺激では蛍光がほとんど見られず,過剰な物理刺激(=圧迫)では逆効果になることも分かりました.また低強度刺激で,側脳室から注入したCSFトレーサーの濃度が大槽(cisterna magna)からの回収液で減少したことから,CSF全体の排出が促進されていたことも示唆されました.
この手法は,高齢マウスにおいても同様に有効であり,加齢により低下していたCSF排出量がほぼ若齢レベルにまで回復しました.わずか20分間の軽い皮膚刺激によって,scLVsとリンパ節へのCSF排出量がそれぞれ4.7倍,2.8倍にまで増加し,加齢による機能低下を補う可能性があることが分かりました.
以上の結果は,非侵襲的,かつ簡便な方法でCSFの排出を促進し,加齢や神経変性疾患による脳機能障害の予防・治療につながる可能性を強く示唆します.特に,睡眠やリンパ排出の障害が関与するとされるアルツハイマー病に対する応用が期待されます.
私のよく知っている麻酔科医が「リンパに流す」とつぶやきながら顔のマッサージをしている姿を長年見て来ましたが,「彼女は正しかったのか」と大変驚きました.ただマッサージの仕方は考える必要があり,マウスの「眼窩周囲,鼻腔,硬口蓋のリンパ管を通り,頸部浅層リンパ管へ」という経路を考えると,ヒトでは下図のような感じになるのではないかと思います(たぶん).強く圧迫することなく,優しくゆっくりマッサージする感じがよいと思います.
Jin H, et al. Increased CSF drainage by non-invasive manipulation of cervical lymphatics. Nature. 643:755–767;2025. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09052-5
柳澤>気持ちの良いフェイスマッサージ、リンパの流れ、脳脊髄液の排出、・・・、認知症の予防、と内容が大変なインパクトあるものなので、コメントも沸き返っていますね。コメントもシェアします。
>「ヒトにあてはめるとこんなかんじ?」という最後の優しいスライドがなんだかかわいらしい感じがして好きです。
>宮坂 昌之
下畑先生、
この記事の読者の多くの方々がリンパマッサージで効果があるはずと判断しておられるようですが、このマウスのマッサージの実験は皮膚刺激(マッサージ)を20分間という長い時間続けた場合のデータです。そして効果があるのは軽い皮膚刺激のみで、強い刺激は効果がありません。おそらく人でも顔面マッサージで頸部リンパ節へのリンパ流量がかなり変化するとは思いますが、どのぐらいの強さでどのぐらい皮膚刺激を与えるかというところが実際上は問題になると思います。そのことを言わないと、短絡して結論する方がかなり多いのではないかと思います。
下畑先生、
この記事の読者の多くの方々がリンパマッサージで効果があるはずと判断しておられるようですが、このマウスのマッサージの実験は皮膚刺激(マッサージ)を20分間という長い時間続けた場合のデータです。そして効果があるのは軽い皮膚刺激のみで、強い刺激は効果がありません。おそらく人でも顔面マッサージで頸部リンパ節へのリンパ流量がかなり変化するとは思いますが、どのぐらいの強さでどのぐらい皮膚刺激を与えるかというところが実際上は問題になると思います。そのことを言わないと、短絡して結論する方がかなり多いのではないかと思います。
微小循環、組織間液(脳ではCSF)、リンパ。グリンパティック・システム
微小循環:血液と組織・細胞の間で物質交換が行われる。交換が行われるのは細動脈から先の毛細血管である。この部分の循環を体循環の中でも特に微小循環という。
組織間液(脳では「脳脊髄液(CSF)」)が細胞をひたしている。
一部はリンパとなり、リンパ管を経て静脈系に戻る。
組織間液(脳では「脳脊髄液(CSF)」)が細胞をひたしている。
一部はリンパとなり、リンパ管を経て静脈系に戻る。
脳脊髄液CSFの産生・吸収 『病気が見える 脳・神経』p168より
・従来、脳脊髄液CSFは脈絡叢で産生され、くも膜下腔を循環し、くも膜顆粒より吸収されると考えられていた。
・上記以外にも毛細血管での産生・分泌、毛細血管やリンパ管、末梢神経周囲の静脈洞などでの吸収が行われる。
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・上記以外にも毛細血管での産生・分泌、毛細血管やリンパ管、末梢神経周囲の静脈洞などでの吸収が行われる。
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グリンパティック・システム Glymphatic System
・グリンパティック・システム(グリアリンパ系←glia + lymphatic system)とは、脳内にある老廃物を除去(貪食+排出)する役割を担う機構。
・グリンパティック・システム(グリアリンパ系←glia + lymphatic system)とは、脳内にある老廃物を除去(貪食+排出)する役割を担う機構。
・貪食するのはミクログリア。
・睡眠中に細胞体積が縮み、リンパ液が流れやすくなり、脳は老廃物をCSF中に排出する。
・深く長く眠った時に、脳脊髄液中のアミロイドβ濃度が高くなる。
・睡眠時間が短いことが認知症の発症リスクと関連
・睡眠中に細胞体積が縮み、リンパ液が流れやすくなり、脳は老廃物をCSF中に排出する。
・深く長く眠った時に、脳脊髄液中のアミロイドβ濃度が高くなる。
・睡眠時間が短いことが認知症の発症リスクと関連



